守護犬
立ち止まる私のそばに黒い獣。
黒い獣が吠える、痩せたその身を低くして、黒い眼は見つめる。そこにいるのが、そこにとどまっているのが一番まずいんだと分かってる分かってる、動けない、出来ないんだ、黒い獣は痩せた躰で私を引くそんな事をしても逃げられない。
黒い獣が吠える、手入れされない毛並みはもう光らない、その眼は睨みつける。
追いつかれた、自分の手も見えていた先も持っていた物も見えなくなった。震える私に寄り添う獣は吠える。怒りに任せて吠える。見えないけれどそこにいる。君がいるから夜は私に近づけない。
黒い獣は吠える、裂けた喉と痩せたその身を震わせて、夜を私に近づけさせまいと。
黒い獣は吠え続ける、私が吠えたて明日を呼ぶまで。
黒い獣は吠える、私のその声を聞くために。
黒い獣は吠え続ける。