君のマフラー燃やす

人は余程エネルギーを余らせているらしいと思った。

きらいな人やどうしても許せない人、気に入らない人、そんな人は中学を出る頃には両手の指じゃ足りなくなったし、今は足の指を加えても追いつかない。きっと同じように思われる事もあったんだろう、でも私はそういった事にとにかく疎い。私はそういう人達に対して「できるだけ不幸になれ〜できるだけ惨めな気持ちになれ〜〜」と思う事もあるけれどすぐに疲れる、そこでどうやら私にはそういった体力はないらしいと気づく。

 

鬼は洞窟の奥、長い髪と血走った目、恨み言の金切り声、骨と皮だけの指は洞窟の壁を掻きつづけている。

 

女は自宅の換気扇下、紫煙を吐き出しボソボソと喋る。喉を枯らす事も爪先を赤く染める事もしない、ただ例え忘れられていたとしても、許す事だけは出来ないと呟く。

 

(決して交わることのない二本の線)